Tuck Andress Guitar Lesson Log - 名詞を組みあわせてとるアドリブ(Play on Context)

Acousphere奥沢です!
2012年3月にアメリカはサンフランシスコまでTuck Andressさんのギターレッスンを受けにいってきました。
このサイトを見てくれているギタリストや音楽を愛する皆さんと情報共有したいと思うので、当日レッスンで習ったことを記事にして掲載してゆきたいと思います!

今回紹介するのは「名詞的なアドリブ」というもの。
アドリブをどのように展開したらTuckさんのように流麗で美しいアドリブメロディを弾けるようになるのか質問したのですが、「Play on Context」と教えてもらいました。

・名詞的に演奏するアドリブ(Play on Context)について
通常ジャズの理論書やバークリーのレッスンではアドリブをするのにスケールというものを学びます。
スケールはその楽曲のキーで使える7つのダイアトニックな音列です。
楽曲のキー単位で考えることもできますし、コード単位で使える7つのAvailable Note Scaleとして考えることもできます。
それを自由な感性で組み合わせてアドリブメロディを作るというコンセプトを学びますが、音数が多すぎて的を得ないフレージングになってしまうことがあり、結局は感性と記憶に依存する結果になってしまいます。
ImprovisationよりもReal Time Composingとしての色合いが強いということですね。

それを払拭するために表れるコンセプトがフレーズです。
過去のジャズ演奏家が実際に演奏したフレーズをコピーし、記憶し、繰り返し練習する。
それを様々な楽曲の上で自分らしく展開してゆく。
フレーズは完成品の流麗なメロディですので、楽曲のどのタイミングで演奏しても屹立した魅力を発揮します。
またIIm7 - V7のような特定のコード進行に対してII - Vのフレーズを弾けば見事に合致します。
しかしながらフレーズは言語でいうなら慣用句なので、微細なコード進行の流れに歩み寄ることはできません。
ジャズのフレーズをたくさんコピーしてもポップスやファンクにはフィットしないのはこの為です。

それではどうしたら自分らしいメロディを全ての音楽やグルーヴでフィットしてゆけるのでしょうか?
その考察をする前にアドリブを言語に例えて見ましょう。

スケールは言語でいうところのアルファベットです。
アルファベットを学んだだけでは会話はできません。
自分で勝手に組み合わせてみても意味の不明な造語ができあがるだけで的を得ません。

フレーズは言語でいうならば慣用句です。
プレデザインされた長文ですから自然な会話の流れにフィットしません。
突然「犬もあるけば棒に当たる」と脈絡なく言われても困惑するでしょう。

では我々はどのように言語をコントロールして意思を相手につたえているのでしょう?
たぶんそれは「名詞的な言語を即興的に組み合わせて」行われているのではないでしょうか。
What do you want ?というフレーズは「What」と「Do」と「You」と「Want」によって構成されています。
これと同じようにアドリブも考えることができれば、即興的に意味があることを、的を得た事を演奏できるようになるのではないでしょうか。
それがTuck Andressさんが教えてくれた「Play on Context」という意味なんですね。

その為にTuckさんはノートを限定して弾く練習をしなさいと教えてくれました。
以下にその例を箇条書きで紹介します。
一つずつ詳しく説明はしませんが、Acousphereのギターレッスンサイトに各コンセプトの記述がありますので、わからない言葉に関してはそちらを参照くださいね。

(1) コードトーンもしくはアルペジオに限定。
(2) コードトーンをトライアドに限定。
(3) 更に絞り込んでGuide Tone LineやBass Tone Lineに限定。
(4) 1音だけを攻める。
(5) その他にもPenta TonicやHexa Tonic、Scaleも限定した使い方をすればContextになる。
(6) 3度の積み重ね上で使うノートを限定。
(7) 3度でなく4度、5度などで積み重ねて限定することもできる。
(8) テトラコードという考え方で限定する。
(9) Root、4th、6th、という組み合わせでも限定されたテトラコードになりContext化される。

いかがですか?
たくさんの名詞的な小さなフレーズ、「Context」を作る方法があるのが理解できたと思います。
どのContextがどういう意味を持っているのかは演奏者自身で判断することができます。
どういった対比にするかも演奏者自身で決められるので、その方法論が各自で確立できればどういったコード進行の上でもグルーヴの上でも早い段階でフィットし、尚且つ自分らしさを表現することも可能になります。
それでいながらも実験的な側面で「今日はいつもの当てはめ方ではなく、あえて反対にしてみよう。そうしたらどうなるのか実験だ!」といったアプローチもすぐにできるのも魅力的で、即興的な要素をとても多く含有してるコンセプトでもあります。
僕自身も現在このアプローチを研究、練習してるのですが無限のフレーズと対比が果てしなく生まれてくるのでとても面白いです。
演奏家の人はぜひこのコンセプトにもトライしてみてほしいと思います!

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