人々で賑わうサンマルコ広場を見渡すといくつかのステージが見える。
それぞれ幌に守られてステージ前にはカフェテーブルが。
その周りには執事風にスーツを着こなしたエレガンテな男性がきびきびと働いている。
カフェ、というよりはホテルの従業員という雰囲気に見えた。
カフェテーブルが美しいシンメトリーに並べられる。
どこからファインダーを構えても絵になるので思わずたくさん写真をとってしまう。
人々が開店したお店に腰をおろし、エスプレッソを楽しみにはじめると、ステージではそれに合わせたように音楽がはじまった。
ピアノ、バイオリン、ビオラ、アコーディオン、クラリネットによるクインテットによる演奏だ。
バイオリンとビオラが小気味よく絡み合う。
そのメロディを従えてクラリネットがソロをとる。
優しい木管の響きがステージを包み込む。
ピアノはあくまでもトライアドを使った誠実なハーモニー。
クラシック音楽への愛情を感じるハーモニゼーションは誰の耳にも心地よい。
アコーディオンがとびきり陽気にリズムを牽引する。
クラシックのクインテットとは思えないファンキーな演奏に、サンマルコ広場が包まれてゆく。
その場にいる全ての人が、ものが輝きだす。
やっぱり音楽の力はすごい。
この光景が365日、サンマルコ広場では毎日毎日続いてゆくのだろう。
本物の音楽文化がこの場所に息づいていて、人々の善意と理解、愛情がその文化を支えている。
日本にこのような文化を宿した場所があるだろうか?
いや、残念ながらないのが現状だ。
ヴェネチアの広場に音楽があろうがなかろうが、世界遺産の街のカフェの儲けは変わらない。
観光客は湯水のように吹き出してくるし、なんの企業努力もいらない。
そこで営業してさえいれば生きてゆけるのだ。
それならば演奏家なんていない方が良い、もしくは音楽CDでもかけておけば用は足りる、というのが合理主義、資本主義国家のイディオムだ。
今の日本はまさにその通り、どこに音楽文化を育む場所があるのか。
サンマルコ広場のホテル、カフェは訪れたゲストを音楽という最上の芸術でもてなしている。
演奏家を雇い、その場所を素敵な場所にする責務を負い、きちんと遂行している。
音楽家もその期待に応え、素晴らしい演奏をおしみなく披露してくれる。
これぞ音楽!これこそ文化!
イタリアの人々に惜しみない拍手を送りたい。
日本は音楽文化後進国だ。
音楽それ自体のレベル、演奏家のレベルは高いのに、文化が全くついてきていない。
それは国、行政の責任であり、社会貢献しない企業の責任であり、また我々市民の責任である。
次の10年の間にサンマルコ広場のような文化をこの日本は作り出せるのか。
そして市民はそれを理解し、受容することができるのか。
イタリアの演奏家を羨望のまなざしで見つめる一方、日本の怪訝な文化に生きる自分を思い、せつない気持ちに苛まれる。
人気の投稿
-
人々で賑わうサンマルコ広場を見渡すといくつかのステージが見える。 それぞれ幌に守られてステージ前にはカフェテーブルが。 その周りには執事風にスーツを着こなしたエレガンテな男性がきびきびと働いている。 カフェ、というよりはホテルの従業員という雰囲気に見えた。 カフェテーブ...
-
この映像の冒頭部分は沖縄、読谷村のさとうきび畑です。 土の色が赤褐色で、滋味あふれる大地。 そこに巨大にそびえるさとうきびたち。 この場所が日本の食卓を支えているんですよね。 この大地、太陽、風、水、植物達。 東京に住んでいるとこういった風景にふれることもなく、商品と...
-
アルノ川にかかるポンテ・ヴェッキオ前の橋をわたり裏通りを抜ける。 途中こちらの地方で有名な紙を専門に販売してる店の前を通る。 繊細な紙がショーケースに並べられているが、誰かに説明されないとその価値は見抜けない。 素晴らしいものを理解できるようになるためには勉強が必要なんだ...
-
しばしホテルにて仮眠をとる。 坂道ばかりのアッシジ観光はさすがに足にきた。 身体のケアをするためにお風呂に入るが、イタリアのバスタブはみんな浅くて日本人にはつらい。 ほとんど寝るような体勢で入浴し、なんとか筋肉をもみほぐす。 夕食までまだあるので、もう一度アッシジの街に...
-
アッシジでの最初の買い物ピザを口に放り込み足早に店を去る。 坂道を上りきれば聖フランチェスコ大寺院だ。 最後の城門をくぐると広大なスペースがひろがる。 写真がその瞬間。 素晴らしい景色に息をのみすぐにカメラを構える。 オフシーズンだけあって人がとても少ないが、それで...
-
フィレンツェ駅へ足早に向かう。 日が低くなってきて建物のむこうに夕日が落ちてゆくのがわかる。 この時間になると建物の頭の上に後光が浮かび上がる。 この光の感じがとても好きで、つい写真の枚数が多くなる。 この時点で600枚近く写真をとってきた。 デジカメのおかげで枚数...
-
時刻表の読み間違いのミスのおかげで思いがけないフィレンツェ観光。 神様の恵みとしか思えないこの機会、きっと何かが待っているに違いない。 初日のローマ、二日目のアッシジよりも俄然テンションがあがる。 足の運びが早くなり、からだの動きが軽い。 身体中に喜びというエネルギーが...
-
アッシジ駅からタクシーで5分、着きましたホテルジオット。 以前、僕の両親も泊まった事があるホテル。 出国前に親父が嬉しそうに想い出を語っていたなあ。 ジオットでの夕食の話を事細かに話していたのを思い出す。 親父への土産噺に今夜はホテルで夕食をとろう。 英語が通じるフロ...
-
サンマルコ広場を目前にしながら路地へ迷いこんだ私。 Barでパニーニをほうばった後はまたサンマルコ広場方面へ向かいつつ路地を抜ける。 いくつも運河を越えて楽しく路地歩きが続く。 イタリアでしか見られない荷車や電話などの写真をとったりして遊んでいた。 すると路地の一角に楽...

